この記事は「ここ一年で心に残ったベストエンタメコンテンツを全力でオススメする Advent Calendar 2024」の12日目の記事になります。
前日の記事はSquさんの「人気キャラはどのようにして殺されるべきなのか/『ドクター・フー:ザ・ギグル』」でした。
なお当アドベントカレンダーで自分は別の日にも記事を書く予定です。複数取ってもいいよって言ってたので……
君は名取さなを知っているか
知っていると思います。今年で7年目の個人バーチャルYoutuberです。
雑談やゲーム配信を主軸に、近年ますます活動の幅を広げています。
ファンは「せんせえ」と呼ばれます。
君は名取さな 1st Live「サナトリック・ウェーブ」を知っているか
知らない方もいるかもしれません。
「サナトリック・ウェーブ」は名取さなさん(以下「名取」)が2024年9月19日に開催した音楽ライブです。
会場はEX THEATER ROPPONGI、昼の部と夜の部の二部構成でした。
私こといいもは昼の部に現地参加、夜の部を自宅で視聴しました。
音楽イベントと私について
一旦自分について書いておくと、かなり音楽好きと言って良いのではないかと思います。
そもそも作っているものがほぼMVなのでそれはそうなのですが……
バンドのライブもクラブイベントもそれなりの数に参加してきました。
Vtuberのリアルイベントについても結構行きますし、なんなら裏方としてお手伝いしたものもありました。
大規模フェスや野外コンサートよりも小~中規模のライブハウスやクラブが好きです。
現地も家で聴くのも好きですし、ヘッドフォンで聴くのもスピーカーで聴くのも好きです。
そんな感じです。弾くのは下手です。
「サナトリック・ウェーブ」はどうだった?
良かったです。とても良かった。
以前より名取は誕生日(3月7日です)の「さなのばくたん。」をはじめとしたリアルイベントを複数回行っており、それら各イベントの細部まで拘った出来を見ていれば必ず良いものになるだろうという確信がありました。
もっともそれらのイベントは楽曲パートこそあれ、それが主役ではなくショーの一部という位置付けでした。
観客とのコール&レスポンスや仲の良いケンカは普段の配信の延長線上にあり、それと物語としてのステージを組み合わせた形は彼女の十八番と言えるでしょう。
しかし今回は音楽ライブということで、普段よりMCも遥かに控えめ。
元々音楽活動をメインにしない(歌に自信があるわけではない)と活動初期に言っていたこともあり、それ一本のイベントを開催することに不安はあったとMC等でも言及していました。
もっとも名取のオリジナル楽曲の層の厚さと、特に近年の歌唱力の伸びを知っているせんせえ方は何も心配していなかったわけですが……
はてさて実際に開催された「サナトリック・ウェーブ」の良かった点を挙げれば、
・多彩な楽曲と磨きのかかった歌唱、生バンドによる迫力の演奏
まず音楽イベントですから、何よりも音楽が大事なわけです。
この点において非の打ちどころが無かった、これだけでも大成功と言えるでしょう。
生バンド編成に合わせ、今までの楽曲も全てバンドアレンジされているのも素晴らしかったです。
・当日に判明する新曲や予想外の演出の数々
このライブの前に名取は3か月連続でオリジナル楽曲を発表しており、もちろんライブに向けて「この曲を演るよ!」という助走であることは誰から見ても明らかなわけです。
その上で完全に初披露の曲があることも必ずではないにせよ予測できるのですが、さらにもう1曲……と発表され、3ヵ月連続リリースが実は5か月連続リリースだったというのは流石に驚きました。
今年は音楽に力を入れると宣言されていたとはいえ、やはり当初の「音楽がメインではない名取」のイメージが残っているところをしっかり殴られた次第です。
また当日に側面からのARカメラが追加され、Web配信で参加している層にもサプライズがありました。
以前より名取はリアルイベント開催時にWeb配信でも楽しめるような工夫をいくつも取り入れていましたが、今回のそれはなかなか大きな要素であったと感じます。
・昼の部と夜の部で全く違うセットリスト
二部開催や複数日程での開催となるライブで、公演ごとにセットリストが異なることはままあります。
ただ大きく変えることができるのは持ち曲の多いバンドや活動歴が長く場馴れしたグループであり、少なくとも音楽主体のライブを初めてやるVtuberに求めることでは無いと思っています。
(ただでさえ通常のライブと比べて準備が多くなるものですし)
ところが驚くべきことに、昼の部と夜の部では上で触れた5つの新曲以外がほぼ全て違うという構成でした。
それどころか夜の部では「昼と夜で全く違うなんてやるなぁ」と思った頃に想定外の演出を入れてくるなど、ただ多くの曲を披露するだけではない構成美も備えていました。どういうことなの。
その他あらゆる細かい点までこだわりと気配りの感じる、とても良いライブでした。
「心に残ったベストエンタメコンテンツ」
さて、ここまでの話で「さぞかし良いライブだったのだろう」という話は伝わったかと思います。
足りない? であればまだ事細やかにセットリストを見返しながら……というのは今回の趣旨ではありません。
「『名取さなのライブ、オタク全員シャボンの匂いしてめちゃくちゃいい匂いで頭おかしくなるかと思った』って言われたい」
「みんなにさ、そうなってもらうにはどうしたらいいの」
ライブの数日前、スタッフの用意した”ライブの心得”を見ていく配信の中で(話題自体は別の話からでしたが)ふと名取が発した言葉に対し、「風呂にしっかり入る」「服をよく洗う/新品にする」といった一般的な解から「これから毎日DEOCOで身体を洗う」という具体的な話が始まりました。
盛り上がるほど汗をかく以上、音楽イベントというのは汗臭くなることは仕方ない部分があります。
可能なら避けたいけどどうしようもないし得られる体験が上回るならいいか、で済ませている話ですし、おそらく本人もエチケットの話としてよりも「そうなったら面白い」というノリで膨らませた話だったのでしょう。
しかし実現のハードルがとても低いこと、実行する内容が具体的であったこと、ライブに来るせんせえはほとんどがこの配信を見ていたであろうこと、そういった要素が噛み合い……
さて当日、EX THEATER ROPPONGIに向け駅から歩いて行くと、だんだんとライブTシャツを着た人が増えてきます。
会場のうち駅から一番近いのはロッカーコーナーですが、そこに近付くとなにやらふんわりといい匂いが!
物販列、入場待機列に並ぶとそこかしこから強すぎないレベルのなんだかいい匂いが!
入場後、開演までの間スタンディングで協賛会社等のCMを見ている間もいい匂いが!
先に書いた通り、音楽イベントにそこそこ行ったことがあっても「観客が全体的になんだかいい匂い」という経験は初めてでした。
その後も上記配信で紹介されていた”心得”を皆律義に守り、オールスタンディングのライブにも関わらず周囲とぶつかることはほぼ無く、前に押される・圧縮されることも無く(逆に配慮しすぎて後ろの方が混んでいたとか)、かつてない快適なライブとなりました。
し、知らない……俺の知ってる音楽ライブと違う……!
挙句の果てには銀テープをキャッチできなかった人のため、皆が余ったテープを何も言わず手すりに並べ始めたりしていました。
エンタメってそうなんだ
何故こんなにいい感じになったのか。普通であればどれだけ注意喚起しても上手くいかないことの方が多いことでしょう。
思うに、皆を動かしたのが「マナー」や「エチケット」でなく「そうなったらオモロいやろなぁ……」という考え、「エンタメの一部を担う」という意識があったからなのだと思います。
先に書いた誕生日イベント「さなのばくたん。」は数年間声出しができない状態の開催となり、その間は無言で着席観覧……のはずでした。
しかし誰が始めたのか”振っているペンライトの色で感情を伝える”という手段が発生し、また名取自身もそれを上手く拾うことでトラブルの場繋ぎをする場面もありました。
普段の配信のチャット欄よろしく、そういった自分たちもエンタメの一部と成り得るという意識、そして名取であればそれを上手く拾って活かしてくれるであろうという信頼がせんせえ方をそうさせたのかもしれません。
そんな観客側からエンタメの一部になるという体験を今年の「ベストエンタメコンテンツ」として紹介したかった次第です。
言い忘れていましたが、当日は自分もしっかりDEOCOで身体を洗ってから現地へ向かいました。
遅い時間になってしまいましたが以上12日目でした。
13日目はClankさんの「【ベストエンタメアドカレ13日目】Vの宴2024というイベントに行って参りました」になります。
ではまた次回!