この記事は「ここ一年で心に残ったベストエンタメコンテンツを全力でオススメする Advent Calendar 2024」の19日目の記事になります。先週に引き続きの登場です。
前日の記事はねじまきさんの「宇多田ヒカルのインタビュー@Tone Glowについて語る。」でした。
TRPGって知ってる?
TRPGは「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(海外ではテーブルトップ)」のことで、ゲームマスター(GM)とプレイヤー(PL)たちが紙と鉛筆、自分のキャラクター、会話、そしてダイス等の乱数装置を用いて遊ぶロールプレイング(なりきり)ゲームのことです。
RPGと言うと日本では「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」等のコンピューターRPGの方がパッと浮かびますが、源流としてはTRPGの方が元になっています。
最近では「クトゥルフ神話TRPG」や「マーダーミステリー」等を配信者がプレイしているのを見ている方も多いかもしれません。
前者は探索者と呼ばれる自前のキャラクターで参加するタイプのTRPG、後者はあらかじめ用意されたキャラクターを割り振って演じるタイプの単発TRPGです(厳密にはTRPGではなくパーティーゲームらしいです)。
TRPGはあらかじめ選択可能なコマンドの決まっているコンピューターRPGと違い、参加者の会話や機転によってその場でルールとの照らし合わせや行動を決定できます。
そのためGMもPLも状況に合わせた柔軟な対応を求められるのが難しい点であり、一方ストーリーの行く先を自身たちで決めていくことができる自由度が大きな魅力となります。
もちろん怒られない範囲でね。
ゲームの性質上参加者が一堂に会して数時間(場合によっては10時間以上)同じ卓を囲む必要があり、距離的な制約も時間的な制約も重いというなかなかリッチな遊びです。
しかし現在はココフォリア等のオンラインセッションツール(以前はどどんとふが有名でした)やDiscord等の通話環境を用いることで、距離的な制約と煩雑になる計算はかなり解消されています。
ソード・ワールド2.5
さてこのアドベントカレンダーは「ここ一年のベストエンタメ」ということで、私は今年の中旬から下旬にかけてTRPGシステムの一つ、「ソード・ワールド2.5(以降SW2.5)」にそれはもうズブズブとハマりきっていました。います。
SW2.5は先の例で言えば前者、冒険者としてのキャラクターを各自で持ち寄り参加するタイプのTRPGで、とても分かりやすく剣と魔法のファンタジー世界を舞台としています。
シリーズ自体も1989年から続く日本のTRPGの老舗で、制作はグループSNEという和製ファンタジーの大御所が行っています。なので日本人としては非常にとっつきやすい(スッと入ってくる)システムだと思います。
「Ⅰ」から「Ⅲ」まで3冊出ているルールブック(キャラクター構築や戦闘、世界観についてまとめた書籍)は文庫本サイズで集めやすく、世界観の補強やキャラクターの拡張に使用するサプリメントも非常に多く出版されています。
今はそれぞれ電子書籍でも購入できるため、さらに導入がしやすくなりました。
そんなSW2.5をあり得ないペース(年間100回くらい)でやっている異常な卓にお邪魔し、日々冒険者として活動している次第です。
以前SW2.0の時に少しだけプレイしたことがあったのですが、その時は固定メンツであったこともあり全員の予定が上手く合う必要がある関係上、頻度高く開催とはなりませんでした。もちろんGMの負担も大きいですしね。
ところが多い人数がそれぞれ各役割を分担できるほどキャラクターを持っていれば、そして高頻度を回せる複数人のGMが存在すれば、いつ開催されてもその時都合の付く人が出られるという理論値じみた環境が揃ったことでとんでもない頻度が実現しています。
元々「せっかく作ったキャラクターと多く冒険に行きたいな」と思っていたので、まさしく渡りに船でした。
ついには自分が沼へ呼び込む側となり、気が付けば初心者勧誘用スライドまで作り始める始末……昔は金欠ゆえ買い揃えなかったサプリメントも、電子書籍のフェア等活用してたっぷり買い漁りました。
うーん、冷静に考えるとえらいことになっているな……
ベストエンタメコンテンツの話としてはある意味ここまでで終わっているので、以降は余談のようなものです。
「看板娘・うちのこ・OC」
少し話は変わるのですが、皆さんは「うちのこ」ないし「オリジナルキャラクター」をお持ちでしょうか。絵を描いている方であれば「看板娘」でも同じです。
ここで「持っている」の定義はどこからなのかと思う方もいるかもしません。
作品として世に出ている?
外見が存在する?
設定が存在する?
脳内にいる?
私は上記のいずれも、つまり脳内の存在であっても「持っている」に含めたいと考えています。
そのように定義した場合、かなり多くの人が「持っている」もしくは「持っていた」になるのではないでしょうか。
しかし多くの場合「(2D/3Dの)外見が存在する」以上の状態を「持っている」にするかと思います。特に脳内のみの場合であれば他に認知されていないわけですから、いきなり他者とその話をしても通じるわけがありません。
それでもそのキャラクターは、少なくともあなたからすれば存在するわけです。
授業中や寝る前にふと妄想した冒険活劇のキャラクター、遊んだゲームや読んだ小説に影響されたり、「この世界にはこういう人物もいるかも」と考えたキャラクター、外見や性格の好みをとにかく盛り込んだ他の作品に存在しないキャラクター。覚えのある方もいるはずです。
一方でそういったキャラクターを世に出す、他者に認知してもらうという行為はかなりの気恥ずかしさを伴っており……それゆえ人に話したことは無い、という方も多いのではないでしょうか。
気恥ずかしさはどこから来るの
オリジナルキャラクターというのは当たり前ですが作った人の好みが反映されるものです。
ですからそれを発露するということは自分の好みを無防備に晒している状態とも言えます。
それに対し「良さが分からない」「妄想甚だしい」「痛い」などと言われるかもしれない。好みそのもの、ひいては自身への否定が飛んでくるかもしれない。そう思うと脳内の存在を世に出すことはとても気が重く、難しい話です。
ですがあなたの好きな漫画のキャラクターも、ゲームや小説のキャラクターも、作者からすればオリジナルキャラクターです。
露出や認知の違いこそあれ、存在するという意味では同じなのではないでしょうか。
そのキャラクターを気に入ったのであれば妄想甚だしいと思ったりしていないか、そうであっても好感情の方が上回っているのではないでしょうか。
こう聞けば「作品になっているものと外見すら存在しない脳内の妄想が同じステージなわけがない」と言われるかもしれません。
授業中や寝る前に妄想した冒険活劇を、実際に小説や漫画といった形で作品にしようとした人は一握りでしょう。
取り掛かってみたものの、上手く文章が書けない、好みの絵にならないという理由で作品として発表しなかった人がさらに大部分かもしれません。
数多のハードルを越え、作品として完成し、世に出て認知されている。そういったものは(人気の差を抜きにしても)高尚な存在であって妄想とは比べ物にならないと思うのは自然なことです。
であれば、作ってしまえばいいのです。
そのキャラクターの外見を、そして活躍する物語を。それを披露する機会を。
格段に生み出しやすくなったうちのこ
近年、SkebやSKIMAといったコミッションサービスが多く存在しています。
もちろん費用こそかかりますが、文字や資料といった形から好みの姿を作り上げてもらうハードルは大幅に下がりました。
いきなり出費はちょっと……というのであれば、Picrewのようにパーツを選択してキャラクターを作り上げる形式で自分の好みと向き合い、その結果を気に入れば資料の一つとして依頼するのも良いでしょう。
(メーカーごとの規約はちゃんと読みましょう!)
でもそれは結局お願いする人に自分の好みをさらけ出す必要があるし、やっぱり引かれるんじゃ……と思うかもしれません。
試しにSkebの検索欄で「オリジナルキャラクター」「OC」で検索してみてください。膨大な公開リクエストにはそんなあなたですら「盛りすぎだろ!!」と思うほどの要素を詰め込んだキャラクターがたくさんいるはずです。
そして何より大切なのは、そのリクエストを受けて仕上げてくれた人がたくさんいるということです。
一度の冒険という作品
一つの物語を執筆し、完成させるのは容易なことではありません。先にも書いた通りです。
上手く書けない、話が面白くない、そう思って作品にならぬまま消えて行った話は多いでしょう。
ですがなんと、TRPGのセッションに参加すると強制的に一話できあがるのです。
しかも同じ卓を囲んだ人に自動的に公開され認知されるのです。これはすごいことですよ。
もちろん話は全て思い通りになるわけではありません。
GMの用意したシナリオにも依りますし、ダイスという運命のいたずらがどう転ぶか分かりません。
それでもその状況に置いてそのキャラクターがどう思い、発言し、行動したのかは決めることができるのです。
そしてその結果はログやセッション履歴として残り、キャラクターが存在する証明にもなります。
SW2.5は剣と魔法の世界ですが、現代や近未来が好みであれば違う世界観のTRPGシステムが山ほどあります。
自分のキャラクターに合った世界を探すのもまた、面白いかもしれません。
汝のうちのこを愛せよ
それでもまだ、心理的障壁が全て取り除かれるということは無いでしょう。
しかし少しでも一歩を踏み出すきっかけになれたら良いなと思います。
一度作ってしまえばあとは気が楽なもので、それどころか他の人の要素盛りすぎキャラクターを見る目も「そうきたかぁ」になっていくので大変楽しくなります。
皆さんの心の内にあるオリジナルキャラクターを見てみたい、そしてもしかしたらいつか同じ卓を囲む日が来たら面白いなぁと考えています。
また遅い時間になってしまいましたが以上19日目でした。
20日目は紅ばめさんの記事になります。